特定技能「宿泊」とは?業務内容・1号2号の違い・受入要件を完全解説【2026年版】

特定技能「宿泊」は、フロント対応や接客など宿泊サービス全般を担える外国人材を採用できる在留資格です。2019年4月の制度創設以来、ホテル・旅館での活用が広がっています。

受入企業の要件・業務範囲・1号と2号の違い・採用の流れをまとめて解説します。2024年6月から宿泊分野特定技能協議会への事前加入が必須化されるなど制度が変わっています。採用を検討している方は最新情報を確認してください。

最終更新 2026年4月29日

合同会社エドミール代表社員 武藤 拓矢

武藤 拓矢

2018年より外国人材支援の業界に飛び込み、技能実習・特定技能合わせてのべ600名の支援実績を持つ、外国人材支援のスペシャリスト。特定技能外国人剤の定着に定評がある合同会社エドミールの代表を務める。 保有有資格:申請等取次者、外国人雇用管理士

プロフィール詳細

特定技能「宿泊」とは

2019年4月の入管法改正で新設された在留資格の一区分です。人手不足が深刻な宿泊業界で、業務スキルと日本語能力を事前に評価試験で確認したうえで採用できる点が従来の制度と大きく異なります。

観光庁の調査では、宿泊業の有効求人倍率は製造業の約3倍に達しています。インバウンド需要の回復が続く中、採用難はしばらく解消されそうにありません。

受け入れられる施設の種類

特定技能「宿泊」で外国人材を受け入れられる施設は、旅館業法に基づく次の3種類です。

  • ホテル
  • 旅館
  • 簡易宿所

住宅宿泊事業法に基づく民泊施設は対象外です。規模は問われませんが、受入企業として別途要件があります。

特定技能1号と2号の違い

項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 最長5年(更新可) 上限なし(更新で継続)
家族帯同 原則不可 配偶者・子の帯同可
取得要件 技能試験+日本語試験に合格 2号評価試験に合格+監督業務経験
永住申請 在留年数カウントへの影響あり 在留年数としてカウントされる

2023年に宿泊分野が2号の対象に加わりました。数年先まで戦力として育てたい人材には、早い段階から2号取得を見据えたキャリアパスを示しておくと定着率が上がります。

従事できる業務・できない業務

認められる業務の範囲は「宿泊サービスの提供に関わる業務全般」です。解釈を誤ると在留資格が取り消されるリスクがあるため、採用前に必ず確認してください。

従事できる業務

  • フロント業務(チェックイン・チェックアウト・電話予約対応)
  • 施設内の接客・案内(館内説明・観光案内・多言語対応)
  • 宿泊施設内のレストラン・ラウンジでの飲食提供
  • 客室清掃・ベッドメイキング(付随的な範囲のみ)
  • 館内設備の保守補助

複数の業務を担う配置が前提です。一つの業務だけに絞ることはできません。

よくある誤りと制限

採用現場で間違えやすいポイントを3つ挙げます。

客室清掃だけを担当させることはできない

清掃専業での配置は業務範囲外とみなされます。清掃を担わせるなら、フロントや接客など他の宿泊サービス業務と組み合わせる必要があります。専業運用が発覚した場合、在留資格の取り消しにつながります。

宿泊施設外のレストランには配置できない

ホテル・旅館内の飲食施設であれば勤務できますが、系列の独立した飲食店は不可です。同一敷地内でも事業形態が別なら対象外になるケースがあります。

民泊施設は対象外

住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく施設は受入れできません。旅館業法の許可施設のみが対象です。民泊と旅館業を両方運営している場合、どの施設での勤務かを明確に区別して管理する必要があります。

受入企業が満たすべき要件

要件を満たしていない場合、申請が不許可になります。3点に分けて説明します。

直接雇用と同等待遇

派遣での採用はできません。直接雇用が原則です。また、同等の業務に従事する日本人従業員と同等以上の報酬水準が義務づけられています。

「外国人だから」という理由での低賃金設定は認められません。給与設定の根拠を賃金規程や同等職種のデータで示せる状態にしておくと安心です。

宿泊分野特定技能協議会への加入(2024年6月から申請前に必須)

2024年6月15日以降、在留資格の申請前に協議会への加入が必須になりました。加入前に申請を進めてしまうトラブルが実際に起きているため、採用活動を始めた段階で真っ先に手続きを済ませてください。

観光庁が運営する組織で、加入は無料です。観光庁のWebサイトからオンラインで手続きできます。

特定技能1号外国人支援計画の作成

1号の外国人材を採用する場合、企業は支援計画を作成する義務があります。計画に盛り込む内容は以下のとおりです。

  • 事前ガイダンス(在留資格・労働条件の説明)
  • 出入国時の送迎
  • 住居の確保支援
  • 生活オリエンテーション(銀行口座・役所手続きの補助)
  • 日本語学習の機会の提供
  • 定期的な面談(4か月に1回以上)
  • 非自発的離職時の転職支援

社内で対応しきれない場合は登録支援機関に委託できます。委託費用の相場は月額2万〜5万円程度です。

外国人材の要件と試験の取得方法

特定技能1号「宿泊」の取得要件

外国人材が取得するには、次の2つを同時に満たす必要があります。

  1. 宿泊分野特定技能1号評価試験に合格する
  2. 日本語能力試験(JLPT)N4以上またはJFT-Basicに合格する

N4は日常会話を概ね理解できるレベルです。JFT-Basicは「暮らしのための日本語」を測る試験で、N4相当とされています。

宿泊分野の技能実習2号を良好に修了した人材は、両試験とも免除されます。

試験の概要と合格率

試験は一般社団法人宿泊業技能試験センター(CAIPT)が実施しており、学科と実技の2種類があります。

  • 学科試験:宿泊業の接客マナー・衛生管理・緊急時対応・フロント業務の知識
  • 実技試験:接客場面のロールプレイング形式

2024年2月の試験では合格率が64.21%でした(マイナビグローバル調べ)。宿泊業の実務経験があれば十分に対応できる難易度で、試験対策テキストはCAIPTのWebサイトから入手できます。

試験はフィリピン・ベトナム・インドネシアなど国外でも受験できるため、入国前に取得してから来日するルートも選べます。

技能実習2号からの移行

宿泊分野の技能実習2号を良好に修了した人材は、試験なしで特定技能1号に移行できます。実習修了の3か月前をめどに申請準備を始めるとスケジュールに余裕が生まれます。

移行時には雇用契約書の締結・支援計画の作成・在留資格変更許可申請が必要です。書類の抜け漏れが不許可の原因になりやすいため、行政書士への相談を推奨します。

特定技能2号「宿泊」への移行

取得要件と現状

2号を取得するには、次の2点が求められます。

  1. 宿泊分野特定技能2号評価試験に合格する
  2. 複数の業務をこなせる熟練度と、他のスタッフを指導した実務経験を持つ

2023年に宿泊分野が2号の対象に加わりましたが、試験の実施回数はまだ少なく合格者数も限られています。最新の試験日程はCAIPTのWebサイトで確認してください。

2号になると変わること

  • 在留期間に上限がなくなる。更新し続ける限り在留できます。
  • 配偶者と子を日本に呼び寄せられる。生活基盤が安定するため、長期定着に直結します。
  • 永住申請の在留年数としてカウントされる。1号の期間は計算に含まれないケースがあります。

長期で戦力として育てる方針なら、1号採用の段階から「2号を目指す」というキャリアパスを明示しておくと、採用競争でも定着面でも有利に働きます。

採用から受け入れまでの流れ

国内採用と海外採用

採用ルートは2つあります。

国内採用(在留資格変更)

留学生・技能実習修了者など、すでに国内にいる外国人が対象です。標準処理期間は1〜3か月で、即戦力を早期に確保したい場合はこちらが現実的です。

海外採用(在留資格認定証明書取得)

海外で試験に合格した人材を新規採用するルートです。認定証明書の取得からビザ発給・入国まで3〜6か月かかるため、採用計画に余裕が必要です。

申請から入社までの流れ

  1. 宿泊分野特定技能協議会に加入する(申請前に必須)
  2. 採用候補者の要件を確認する(試験合格証・日本語試験証明書・パスポートなど)
  3. 雇用契約を締結する(賃金・労働時間・業務内容を明確化)
  4. 支援計画を策定する(社内対応または登録支援機関への委託)
  5. 出入国在留管理庁に申請する(変更申請または認定証明書申請)
  6. 許可が下りたら就労開始

出入国在留管理庁の標準処理期間は約2か月です。書類に不備があると審査が長引きます。必要書類のチェックリストは出入国在留管理庁の公式サイトで確認してください。

よくある質問

客室清掃だけを担当させることはできますか?
できません。清掃専業の配置は業務範囲外です。フロントや接客など他の宿泊サービス業務と組み合わせることが必要です。

民泊施設でも受け入れられますか?
受け入れられません。対象は旅館業法に基づくホテル・旅館・簡易宿所に限られます。住宅宿泊事業法(民泊法)の施設は制度の対象外です。

技能実習修了者は試験が免除されますか?
宿泊分野の技能実習2号を良好に修了した場合、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。ただし在留資格変更許可申請は別途必要です。

協議会への加入にはお金がかかりますか?
無料です。2024年6月15日以降は申請前の加入が必須です。観光庁のWebサイトからオンラインで手続きできます。

特定技能2号に移行すると何が変わりますか?
在留期間の上限がなくなり、配偶者・子の帯同が可能になります。永住申請の在留年数にもカウントされます。長期雇用を見据えるなら、1号採用の段階から2号へのキャリアパスを本人と共有しておくと定着につながります。

まとめ

特定技能「宿泊」は、フロント・接客・飲食対応など宿泊サービス全般を担える外国人材を採用できる制度です。2024年6月の協議会加入必須化、2023年の2号対象拡大と、制度の骨格は整ってきています。

採用を動かす前に確認しておきたいポイントを絞ります。

  • 清掃専業・民泊施設への配置は不可
  • 2024年6月15日以降は申請前の協議会加入が必須
  • 国内採用は1〜3か月、海外採用は3〜6か月が目安
  • 2号に移行すると在留期間上限がなくなり家族帯同も可能
  • 宿泊分野の技能実習2号修了者は試験免除で移行できる

個別の申請要件は状況によって変わります。出入国在留管理庁や観光庁の公式サイトで最新情報を確認のうえ、具体的な手続きは行政書士に相談することをお勧めします。

MORE美編集チーム

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