
特定技能の義務的支援とは?10項目の内容と実施ポイントを解説【2026年版】
登録支援機関への支援業務は、全部ではなく一部だけの委託も法令上認められています。ただし一部委託を選べるのは「直近2年以内に就労系外国人の受け入れ実績がある企業」に限られるため、初めて特定技能外国人を受け入れる場合は全部委託が原則です。
一部委託ができる条件・委託できる業務の範囲・費用の目安・注意点まで、実務で使える情報を整理しました。
最終更新 2026年4月29日
武藤 拓矢
2018年より外国人材支援の業界に飛び込み、技能実習・特定技能合わせてのべ600名の支援実績を持つ、外国人材支援のスペシャリスト。特定技能外国人剤の定着に定評がある合同会社エドミールの代表を務める。 保有有資格:申請等取次者、外国人雇用管理士
特定技能の受入れ機関(企業・組織)は、1号特定技能外国人への支援計画を自社で実施するか、登録支援機関に委託するかを選べます。委託の方法は「全部委託」と「一部委託」の2種類です。
支援計画に定めた10の義務的支援を、すべて登録支援機関に任せる方法です。出入国在留管理庁の規定では、全部委託した場合は受入れ機関が自社で支援体制の基準を満たさなくても「満たしたものとみなされる」とされています。
社内に専任担当者を置かなくてよいため、外国人採用が初めての企業でも始めやすい選択です。
10の義務的支援のうち、一部だけを登録支援機関に任せる方法です。自社で対応できる項目は内製化し、負担の大きい項目だけ外部に委託することでコストを抑えられます。
ただし後述の「受け入れ実績」などの条件を満たしていない場合は、一部委託は選べません。
| 項目 | 全部委託 | 一部委託 |
|---|---|---|
| 自社の支援担当者 | 不要(みなし適用) | 必要 |
| 受け入れ実績の条件 | 不問 | 直近2年以内の実績が必要(原則) |
| 委託費用 | 全項目分の費用 | 委託項目分のみの費用 |
| 自社の管理負担 | 小さい | 委託しない項目の分だけ発生 |
一部委託は、自社で支援体制を組める企業に認められた選択肢です。要件は主に2点あります。
受入れ機関が「直近2年間に就労系の在留資格を持つ外国人を受け入れた実績がない」場合、全部委託が義務付けられます。裏を返せば、2年以内に実績がある企業は一部委託を選べます。
ここでいう「就労系在留資格」には技能実習・技術・人文知識・国際業務なども含まれます。特定技能だけが対象ではなく、他の在留資格での受け入れ実績でも要件を満たせます。
支援計画を自社で一部でも実施する場合、支援担当者を社内に配置する必要があります。特定の資格は不要ですが、外国人との意思疎通ができることや、支援計画を適切に運用できる素養が求められます。
支援担当者と支援管理者は別の役割です。管理者が監督責任を担い、担当者が実務を行います。兼務は認められますが、役割を分けて管理するほうが実務上は混乱が少ないです。
直近2年以内に就労系外国人の受け入れ実績がない企業は、全部委託が必要です。経験のない状態で内製化すると支援の質が下がるリスクがあるため、制度上そうなっています。
初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、まず全部委託で始めて2年間の実績を積み、その後一部委託に切り替えるのがスムーズな流れです。
登録支援機関は、受入れ機関から委託された支援業務をさらに別の第三者へ再委託することが法令で禁止されています。「登録支援機関Aに委託して、実際にはBが動く」という構造は認められません。
登録支援機関を選ぶ際は、業務を自社で完結できる体制かどうかを必ず確認してください。
特定技能外国人への義務的支援は全10項目あります。一部委託の場合、この10項目のどれを委託するかを支援委託契約書に明記する必要があります。
| 項目 | 支援内容 | 委託向き |
|---|---|---|
| ①事前ガイダンス | 入国前の生活・就労内容の説明 | △ |
| ②出入国時の送迎 | 空港等への送迎対応 | ○ |
| ③住居確保・生活準備 | 住居手配、銀行口座・携帯電話の開設支援 | ○ |
| ④生活オリエンテーション | 入国後の生活ルール・制度説明(8時間以上) | ○ |
| ⑤日本語学習機会の提供 | 日本語教室・自学教材の紹介 | △ |
| ⑥相談・苦情対応 | 生活・職場の悩み相談(母語対応が望ましい) | ○ |
| ⑦日本人との交流促進 | 地域交流・行事参加の機会提供 | △ |
| ⑧転職支援(非自発的離職時) | やむを得ない離職時の再就職支援 | ○ |
| ⑨定期面談 | 3か月に1回以上の外国人本人・上司との面談 | ○ |
| ⑩行政手続きの情報提供 | 住民票・税・年金等の手続き案内 | △ |
※「○」は委託向きの項目、「△」は自社対応も比較的しやすい項目の目安です。
①事前ガイダンス・⑤日本語学習の提供・⑦日本人との交流促進・⑩行政手続きの情報提供は、担当者が社内の外国人と直接関わる業務です。特に①と⑩は書類・情報のやり取りが中心で、外国人採用の経験が少ない企業でも対応しやすい項目です。
②出入国時の送迎・③住居確保・生活準備・⑥相談・苦情対応・⑨定期面談は、多言語対応や専門的な知識が求められます。特に⑨定期面談は「外国人が会社に言いにくいことを第三者に話せる」という点が大きく、外部に任せると本音が出やすくなります。本人の状況を早期に把握したい企業ほど委託の効果を感じやすい項目です。
全部委託にかかる費用は月額1人あたり2万〜5万円が相場で、平均は約2万8,000円程度です(2024〜2025年時点の市場概況に基づく概算)。10人受け入れている企業なら、年間の支援委託費だけで336万〜600万円になります。
費用は機関によって大きく差があります。安さだけで選ぶと支援品質が不十分になるケースもあるため、費用と対応内容を並べて比較してから決めることをお勧めします。
支援委託費は「支援項目数」や「対応工数」で設定する機関が多いため、委託項目を減らせば費用を下げられる場合があります。①③④⑦⑩の5項目を内製化した場合、月額を1人あたり5,000〜1万5,000円程度削減できることがあります。
ただし料金体系は機関によって異なります。一部委託を検討する場合は、複数の機関に「一部委託の場合の見積もり」を出してもらって比べるのが確実です。
一部委託の場合、支援委託契約書には「どの支援項目を委託するか」を具体的に書く必要があります。「定期面談(⑨)と相談・苦情対応(⑥)のみ委託する」のように、項目を特定して明示します。
曖昧な記載のまま運用すると、在留資格の審査・更新時に確認が入る場合があります。契約書の作成に不安があれば、入管手続きを専門とする行政書士に相談するのが確実です。
受入れ機関が一部委託を選んだ場合でも、委託を受ける登録支援機関は10の義務的支援すべてを実施できる体制を持っている必要があります。出入国在留管理庁の規定では「支援の一部のみを行うものとして登録を受けることはできない」と定められており、登録要件として全部実施できることが前提です。
「うちはこの項目しか対応していない」という登録支援機関は制度上存在できません。委託先を選ぶ際に過度に心配する必要はありませんが、対応実績や体制を事前に確認しておくと安心です。
一部委託は「直近2年以内に就労系外国人の受け入れ実績がある」「自社で支援担当者を配置できる」企業が選べる選択肢です。コストを抑えながら社内にノウハウを積み上げたい企業にとっては、全部委託より合理的な場合があります。
ただし自社担当分の支援義務は残り続けること、契約書の委託範囲の記載が曖昧だとトラブルになること、登録支援機関の再委託は法令上禁止されていることは実務上のポイントとして押さえておいてください。初めて特定技能外国人を受け入れる場合は全部委託が原則で、実績を積んでから切り替える流れが実際にはスムーズです。
要件の確認や契約書の作成には、出入国在留管理庁の公式情報を参照するか、入管手続きを専門とする行政書士に相談することをお勧めします。
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