「副業したいけど、会社が副業が禁止だったらできないの?」
国が「働き方改革」という旗を上げて副業・兼業を推奨し、それに伴いコンプライアンスに厳しい大手金融機関までもが副業解禁になるなど、副業がこれからの働き方として少しずつ定着し始めています。
一方、日本の企業全体で見ると企業の副業解禁率は決して高くない。
信用調査会社の帝国データバンクがランダムに選んだ1,147社に対して行なった副業・兼業に関するアンケート結果は次のような結果となりました。
現実問題、「副業したいが会社で禁止されている」という場合、会社に黙って副業してバレた場合、クビになってしまうのでしょうか。
今回は、就業規則で定められている副業禁止の法的拘束力について見ていきたいと思います。
「就業規則に副業禁止と明記されていたら、副業は一切できないか」という問いの答えを先に書いてしまうと、「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」がない限り、会社側は副業を理由に解雇することはできません。
労働に関する法律はいくつかあり、その中心が「労働三法(労働組合法・労働基準法・労働関係調整法)」と呼ばれるものです。
労働組合法 | 使用者と労働者の関係を対等にするための労働組合に関する法律。 |
---|---|
労働基準法 | 労働条件に関する最低限の基準を定めた法律。 |
労働関係調整法 | 労働争議の予防・解決をするための手続きを定めた法律。 |
この他にも「最低賃金法」や「労働金庫法」など、それぞれの事案に基づいた法律が定められています。
そして、”労働契約”に関しての体系的なルールとしてまとめられた法律が「労働契約法」であり、2008年に生まれた比較的新しい法律です。
今回の、就業規則に「副業禁止」と書いてあるだけで副業を行う人を解雇できるかという問いの答えが、「労働契約法第16条」にあります。
(解雇)
労働契約法第十六条解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
出典:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128
つまり、会社が解雇する場合は「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」が必要になり、そして副業をしただけでは「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」に該当しません。
実際にあった過去の判例を見ても、“勤務中に年1、2回アルバイトをしたケース”や“妻が経営する同業他社で営業を行なったケース”も「懲戒解雇及び普通解雇の無効」という判決が下されています。
裁判 | 詳細 |
---|---|
十和田運輸事件 2001年6月 |
貨物運輸の会社の勤務時間中に荷物積込などのアルバイトを年1、2回行ったとして懲戒解雇を言い渡されたが、裁判ではアルバイトが「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」に該当しないとして、懲戒解雇及び普通解雇の無効となった事例。 |
定森紙業事件 1989年 |
製品の販売会社の社員が、在職中に妻が経営する同業会社の営業を行っていたとして、「在職中に会社の同意なく兼業をした」という理由で懲戒解雇を言い渡されました。しかし、「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」には該当しないとして、懲戒解雇及び普通解雇が無効となった事例。 |
勤務中にアルバイトをしても、年1回程度であれば「解雇に値する十分な理由」とはなり得なのは驚きですね!
それほど、労働者は守られている橘です。
ただし、注意が必要なのは「公務員」です。
公務員の副業は「公務員法」により法律で禁止されています。
地方公務員法 38条 |
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。 |
---|---|
国家公務員法 104条 |
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。 |
公務員の副業禁止の理由は、公務員が”国または地方公共団体のために働く”という立場だからです。
公務員は公平性を保つ必要があり、どこかに加担する行為は認められず、副業をするということが「一部の会社の利益に加担する」と捉えられかねないため、公務員の副業は法律で禁止されています。
しかし、近年は例外的に許可を取れば副業が認められることもあり、極端に加担する行為に該当する副業でなければで問題ないとされています。
実際に公務員が副業を行う場合は「許可」をとる必要があり、許可の申請方法は「国家公務員」と「地方公務員」によって異なります。
許可を取らずに副業を行うと、即解雇の可能性も十分あるため必ず許可の申請を行いましょう。
労働契約法で守られているからとはいえ、好き勝手に副業をやっていいということではありません。
抽象的な概念にはなりますが、下記3つに反する副業は「解雇に値する客観的かつ合理的な理由」に該当する恐れがあります。
副業が「長時間労働」や「肉体的にハードな労働」のケースが該当し、十分な休息を取れていない場合が該当します。
実際にあった判例では、終業後に6時間のアルバイトを行なったとして解雇処分となりました。
小川建設事件
1982年11月二重就職を懲戒事由とする就業規則の規定に基づき、勤務時間外にキャバレーで会計係等として就労していた原告が解雇されたため、地位保全と賃金支払の仮処分を求めたが、却下された。
出典:https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00839.html
同業他社だからという理由では解雇には至らず、顧客の引き抜きや情報漏洩など明らかに会社が不利益を被った場合は解雇の対象となります。
具体的には下記のようなケースです。
客観的に見て、第三者の信用を落とすことに繋がる副業は、解雇処分となる可能性があります。
副業が会社にバレて言い争いになった場合、話し合いで決着がつかなければ「労働裁判」となります。
労働契約法は労働三法は異なり「民法」のため、当事者同士(使用者と労働者)で解決する必要があり、話し合いで解決しなければ裁判を行うことになります。
ただし、会社と一個人の持っているお金の差は歴然で、1年以上かかると言われる裁判を自費で行うのは費用面や時間的コストも含め難しい、、、この時間・金銭的負担を軽減するために生まれた裁判が「労働裁判」です。
労働裁判の特徴は平均70日前後で決着がつくという点です。
労働裁判を行うには下記の書類が必要になりますので、可能性がある方は保管しておきましょう。
労働裁判でかかる費用は「弁護士の費用」で、おおよそ60万円〜100万円前後です。
相談料 | 10,000円 / 1時間(無料の場合もあり) |
---|---|
着手金 | 20万円〜30万円 |
成功報酬 | 15%〜20% |
手数料 | 5万円 |
実費 | 事案による |
日当 | 1時間:1万円〜3万円前後 |
労働契約法守られているとはいえ、副業がバレて言い争いになると最終的には裁判を行う必要があり、実費で60万円近くかかってしまい、お金も時間も浪費することになります。
副業をしたことで即解雇はあり得ないが、万が一に備えて会社に事前に相談して取り組むことをオススメします。
副業禁止となっている会社で副業をしたからといって解雇になることは法律上ありません。
しかし、副業がバレて言い争いになると当事者で話し合い、裁判を行う必要があるため非常に面倒です。
今後も会社員をやめる予定のない方は、一度上司と相談し会社に公認された状態で副業することをオススメします。
起業のお金周りについて相談したい!
MORE美ではより多くの女性の挑戦を支えるために、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーのサポートを無料で提供しております。
全国20地域に支店がありますので、まずは気軽にご相談くださいませ。