平均年収がここ数年横ばいが続き、終身雇用の終焉を迎える中、将来に不安を感じ、副業に関心を持つ人がここ数年で急増しています。
さらに国の政策としても「働き方改革の実現」に向けて、副業の促進を掲げています。
しかしその一方、日本最大の企業信用調査会社の帝国データバンクによると、約8割の企業は未だに副業禁止の文化が根付いているのが現状です。
今回は、副業禁止がダメな理由とは何か、副業に関しての情報についてお伝えしたいと思います。
まず、企業が就業規則に「副業禁止」を記載し、その項目を破っただけでは一方的に労働者を解雇することはできません。
労働者の最低限の労働環境保護の観点で定めれた労働基準法には「解雇権濫用の法理」があり、使用者は下記2つの条件をクリアしていないと労働者を解雇できません。
合理的な解雇といと非常に抽象的だが、厚生労働省が公表している就業規則の就業規則のモデルから汲み取ることができます。
下記が就業規則の(副業・兼業)に関する事項について記載されている文です。
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2.労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3.第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。1 労務提供上の支障がある場合
2 企業秘密が漏洩する場合
3 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
4 競業により、企業の利益を害する場合
つまり、合理的な解雇とは
の4つを犯した場合に合理的とみなすことができます。
労働者には「職務専念義務」があり、提供している労働時間は企業の業務に専念する必要があります。
専念とは、労働時間を職務に専念することを意味し、労働時間以外を制約する義務ではありません。
例えば、副業が夜な夜な続き、睡眠不足によって本業に支障をきたした場合は懲戒解雇として十分な理由になりえるということです。
下記は、労務提供上の支障に関して懲戒解雇になった判例と、懲戒解雇が無効になった判例です。
事件名称 | 日付 | 詳細 |
---|---|---|
小川建設事件 | H57.11.19 | 毎日6時間程度の夜間勤務した労働者に対して、第三者から見て明らかに労務に支障をきたす可能性が高いことから、懲戒解雇が有効となる。 |
東京都私立大学教授事件 | H20.12.5 | 大学教授が無許可で他校の業務を請け負い、本業の講義を休校したことで大学側は教授に懲戒解雇を言い渡したが、副業が本業へ支障をきたしたと認められず、解雇無効となる。 |
企業には様々な重要な情報があり、中には絶対に漏らしたくない社外秘密の情報もあります。
そのような重要な情報を漏洩した場合、法律上の義務である守秘義務を守らなかったとして懲戒解雇に該当する場合があります。
下記は、企業秘密漏洩に関して懲戒解雇になった判例と、懲戒解雇が無効になった判例です。
事件名称 | 日付 | 詳細 |
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ベネッセ個人情報流出事件 | H29.3.21 | ベネッセのグループ企業の派遣社員が個人情報を業者に売却し、懲戒解雇及び懲役2年6ヶ月、罰金300万円。 |
乙山商会事件 | H25.6.21 | 私物の取引情報が入ったハードディスクを持ち帰り使用したとして、取引先情報の持ち出しを理由に懲戒解雇を言い渡したが、取引先情報は外部へ流出していないことから、解雇無効となる。 |
例えば、同僚やクライアントの引き抜きを行った場合など、企業の秩序を大きく乱したとみられる行為は懲戒解雇に該当する場合があります。
下記は、信頼関係の破壊に関して懲戒解雇になった判例と、懲戒解雇が無効になった判例です。
事件名称 | 日付 | 詳細 |
---|---|---|
学校法人敬愛学園事件 | H6.9.8 | 学校と教員が教育方針に関して争い、教員が弁護士会や地方メディアに対して、事実と異なる内容をリークしたことで、信頼関係を著しく損なうものとして懲戒解雇となる。 |
十和田運輸事件( | H13.6.5 | 運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由に解雇を言い渡したが、職務専念義務の違反や信頼関係破壊とまでは認められず、解雇無効となる。 |
競合する同業他社で労働を行った場合、懲戒解雇に該当する理由として認められる可能性があります。
下記は、競業に関して懲戒解雇になった判例です。
事件名称 | 日付 | 詳細 |
---|---|---|
橋元運輸事件 | H47.4.28 | 企業の管理職の労働者が、競合他社の取締役に就任したことに対し、競業避止義務に違反するとして懲戒解雇となる。 |
副業を就業規則で禁止している会社が、いきなり労働者を解雇すると「解雇権の濫用」とみなされてしまう可能性があります。
そのため、順序を踏んでいくことが必要になります。
例えば、
等といったステップを踏む必要があるということです。
リクルートキャリアが調べた「副業・兼業を認めていない理由」によると、副業を認めない理由で最も多かったのは下記4項目です。
どんなに副業に関しての情報を隠蔽していたとしても、住民税によってばれてしまう可能性があります。
日本の税法は累進課税で、会社から貰う給与所得と副業によって得る事業所得は総合課税といって、合算して所得計算を行い、税金を納めることになります。
そして、住民税は原則、企業が労働者全員の分をまとめて支払うため、本来給与所得の計算で支払う住民税と、副業によって所得が増えた住民税が異なるため、経理担当にばれてしまう可能性があるのです。
住民税の支払い方法は2つあり、普通徴収と特別徴収があります。
普通徴収 | 自分自身で住民税を税務署に納付する。 |
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特別徴収 | 毎月の給与から住民税分を差し引き、企業が労働者の代わりに税務署に納付する。 |
通常、労働者は特別徴収を使うのですが、普通徴収を選択することで、自分で住民税を税務署に直接納めることができます。
自分で納めることによって、企業にばれることはなくなりますが、疑われる可能性は残っているので、絶対にばれないというわけではありません。
ただ、現実としては、副業がばれたケースで多いのが
の2つですので、副業をしたとしても知人にうっかり話したりしない、副業に関するものを会社に持っていかないなどの対策を打つことが重要となります。
副業を認めてない企業がまだまだ多い一方、コンプライアンスに厳しい大手銀の新生銀行が、2018年4月から副業を解禁したことが話題になりました。
日本国家も副業促進の動きは進めており、一億総活躍社会実現に向けて安倍内閣の決定で2016年9月に「働き方改革実現会議」を設置しました。
厚生労働省が公表する就業規則モデルも、2018年1月から「労働者は、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」という一文を盛り込み、副業解禁を目指す姿勢を見せました。
これだけ国が副業を推し進めるには、国家の大きな2つの変化があるからです。
副業促進の背景に隠れる大きな変化は「労働人口の減少」です。
第二次ベビーブームと言われた1973年の出生数が209万1983人だったのに対し、2017年はわずか94万6060人しか生まれてこず、2016年に続けて2年連続で100万人を割れました。
そのため、人口が減っていくに伴い労働人口も減少していくことが確実視され、2017年の6556万人に対し、2060年には3分の2にまで減少することが見込まれています。
企業は、労働者というリソースが限られてくる中で、囲い込むのではなくシェアし確保するといったシフトするといった流れになります。
労働人口の減少による労働者のリソース問題に伴い、企業側は労働者を終身雇用で雇う責任を果たすことが難しくなり、副業を解禁せざるを得なくなります。
短時間労働、フレックスなどといった様々な働き方が生まれてくる中で、労働者の家族分を養うだけの給料を払うことが難しくなります。
責任回避のためにも、副業を解禁する流れになります。
高度経済成長期のような大きな変化がこれからの時代はより”個”の時代となっていきます。
今までは大企業に入り、労働者として一生懸命働くことで十分満足な生活ができましたが、これからはそれぞれがしっかり自分で未来を作る時代に変わります。
まずは小さなことでいいので、自分で”稼ぐ”という経験を積みましょう。
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